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【開発ストーリー】なぜ「柔らかい」割り勘アプリを作ったのか?

公開日: 2026年3月27日 | カテゴリ: 開発の裏側

「正しさ」だけでは解決できない問題

大学生としての生活も後半に入った3年生の冬。就職や将来についてぼんやりと考え始める時期に、私はこの「Poff(ぽふ)」の開発をスタートさせました。きっかけは、友人たちとの何気ない日常の中にありました。

男同士の友人グループで旅行に行ったり飲み会をしたりすると、必ず発生するのが「誰かがまとめて払い、後で精算する」という作業です。今の時代、スマホ一つで簡単に送金ができる便利な世の中になりました。しかし、システムが便利になっても、どうしても解消できない「心のつっかえ」があることに気づいたのです。

「昨日の飲み代、一人3,450円ね」というLINEを送る側は、どこかで相手を急かしているような、ケチな人間だと思われないかという不安を感じます。一方で、受け取る側も「あ、忘れてた。悪いことしたな」という小さな罪悪感を抱いてしまう。この「数字のやり取りに伴う微妙な気まずさ」は、どんなに計算が正確なアプリを使っても消えることはありませんでした。

世の中にある多くの割り勘アプリは、いかに正確に、いかに効率的に計算するかという「論理」の部分を追求しています。しかし、人間関係において必要なのは、論理的な正解だけでなく、もっと「感情的な柔らかさ」ではないか。そう考えたのが、個人開発としての第一歩でした。

塾講師のアルバイトで見つけた「デザインの力」

私は大学生活の多くを、塾講師のアルバイトに注いできました。中学生たちを相手に数学や理科を教える日々は、今の開発スタイルに決定的な影響を与えています。

数学の難しい公式を教えるとき、教科書通りの黒文字だけの解説では、生徒たちの集中力はすぐに切れてしまいます。数字というものは、本質的に無機質で、人によっては「冷たいもの」に見えてしまうからです。

そこで私は、自作のプリントに少し工夫を凝らしました。重要なポイントを丸みを帯びたフォントに変え、キャラクターの吹き出しで「ここは間違えやすいから注意だよ!」と添えたり、暖かみのある色使いで数式を囲んだりしてみました。すると、驚くほど生徒たちの反応が変わったのです。「難しそう」という心理的な壁が、デザインの工夫ひとつで「やってみよう」という前向きな気持ちに変わる瞬間を、私は目の当たりにしました。

この経験から学んだのは、「伝える内容がどれほど正しくても、インターフェース(見せ方)に愛嬌がなければ、相手の心に届かない」ということでした。これを割り勘という「お金のコミュニケーション」に応用できないか。計算機としての冷徹な正確さを保ちつつ、絵本のような優しさを併せ持ったアプリ。それがPoffの理想像となりました。

キャラクター「Poffy」たちが担う役割

Poffの最大の特徴は、画面のあちこちに登場する「Poffy」「Chip」「Gosty」というキャラクターたちです。これは単なるマスコットキャラクターではありません。彼らは、ユーザー同士の間に立つ「中立的な第三者」としての役割を担っています。

例えば、精算を催促するような場面。人間同士が直接「お金を払って」と言うのは角が立ちますが、アプリの中でキャラクターが「今、これくらいの残高があるよ」と柔らかく提示してくれれば、それは「誰かからの請求」ではなく「キャラクターが教えてくれる現在の状態」に変わります。この小さな視点の変化が、人間関係の摩擦を驚くほど軽減してくれるのです。

色の選定にもこだわりました。警告を意味する赤であっても、Poffでは「ソフトレッド」と呼ばれる、どこか安心感のあるパステルカラーを採用しています。エラーが出た時でさえ、ユーザーが責められているように感じない。そんな細かな配慮を積み重ねていきました。

卒業を控えた今、Poffに込める願い

大学3年生から4年生という、人生の大きな分岐点に立ちながら開発を続けてきたPoff。テスト勉強や研究、そして塾講師の仕事の合間を縫って、一人でコツコツとコードを書いてきました。

私は、ITの力は人を便利にするだけでなく、人を「優しく」するために使われるべきだと信じています。お金という、ともすればギスギスしがちな話題を、少しでも温かく、楽しいものに変えたい。もし、Poffを使って「今回の旅行、お金のことで一度も揉めなかったね」と言ってくれるペアが一組でも増えたなら、開発者としてこれ以上の幸せはありません。

Poffはこれからも、単なる計算機ではなく、あなたの大切な人との絆を守るための「心のインフラ」として、ゆっくりと進化を続けていきます。